患者さんと向き合う時の心構えってどうしたらいいのだろう?
新卒で入職したての僕はいつも考えていました。
あの頃は患者さんを前にすると緊張してドキドキして、頭がパンパンになっていました。
「失敗したらどうしよう?」
「上手くいかなかったらどうしよう?」
「何からしたらいいのだろう?」
このように迷い慌てふためいていたことをよく覚えています。
顔は平静を装い、内心びくびくしてシャツは汗だく。
じゃあ今はどうなのか?
まったくそんなことが無いとは言えませんが、心掛けていることはあります。
患者さんにとって、
「言葉を交わしたり、同じ空間にいるだけで安心感をもたらせるセラピストでありたい」
このスタンスを大切にしています。
このように少しずつ落ち着いて患者さんと向き合えるようになってきたきっかけはいくつかあります。
オステオパシーを学び始めたこともその一つでしょうか。
そして、一冊の本の中で出会った女医さんの影響が大きいですね。
「グラディス・テイラー・マクギャレイ」について
インド生まれのアメリカ人女性で、主に小児や産婦人科の領域でご活躍された女医さんのようです。自然分娩や、出生直後の新生児に対する安全な管理方法など小児科や産婦人科の領域で精力的に活動されたようです。ちなみに分娩室に旦那さんを入れて出産に立ち会えるようになったきっかけもこの先生だったそうです。
マクギャレイ先生が診療していたクリニックには多くの重病、難病を患った方がたくさんいらしていました。末期癌を患い、抗がん剤や外科手術(アロパシー医学)を受けても何の成果も得られなかった患者を奇跡的に治療していたそうです。
他にも病院で医学的な検査を受けても異常は見つからなかった沢山の患者さんが訪れては治療を受けていました。
そんな先生は通常の医学だけにとどまらず、代替療法(鍼灸、徒手療法、ヨガ、瞑想、音楽、心理療法)を兼ね備えたクリニックを運営されていたようです。
これだけ見ると本当に偉大な先生だなと感嘆してしまいます。
さぞかし患者さんへ様々な治療の提案を行っているのだなと思いながら書籍を深く読んでいくと意外とそういう訳でもありませんでした。
というより、それらは枝葉のようなものであり根幹には「患者さんの中にある自然治癒力(インナードクター)を呼び覚ますこと」ということを念頭に置いて患者さんと向き合うことの必要性を説明されていました。
物質的な肉体だけでなく、思考や精神をプラスの方向へ動かすことの重要性を説かれています。その治療成績にマクギャレイ先生自身が驚き、患者さんから学びを得ることも多かったようです。
ここまで聞くと、偉大で有名なドクターなのだと思います。
しかし、世間は許してくれなかったようです。
アロパシー医学会(薬物療法や外科手術を中心とした医療)から非難や嫌がらせなどの大バッシング受けることになったのです。
一般的な医学の常識から逸脱していることが理由で非難の的になってしまいます。
ついには医師免許剝奪の危機にも直面したりと波乱万丈な人生を歩まれています。
それでも彼女はものともせず真向から立ち向かったのです。
結果として、医師免許を剝奪されることは無く、家庭医として長年ご活躍されたようです。
*ちなみにマクギャレイ先生はアロパシー(薬物療法や外科手術)に対して否定的に捉えたり、無意味に批判したりすることは無くて大変、人としての器が広いお方です。
少し話は逸れますが、オステオパシーの創始者であるアンドリュー・テイラー・スティル先生や、クラニアルオステオパシーのパイオニアであるウイリアム・ガーナー・サザーランド先生も同様に同業のドクターやアロパシー医学会から非難を受けていたようです。
しかし、すべて結果で捻じ伏せたと言われています。
(カッコよすぎますね!)
創始者のスティル先生の奇跡的な治療技術を求めて人が集まりすぎて、一つの町が誕生したという秘話まであるようです。
今頃、スティル先生は天国でどのようなお気持ちでしょうか?
当時は非難され、変人だの悪魔だのと迫害を受けていたにも関わらず
現代ではアメリカでのみオステオパシーは医師と同等の扱いとなっており、そして遠く離れた日本にまで偉大な先人達の魂は脈々と伝わってきていることは大変すばらしいことです。
話をもとに戻して、まとめますと。
何をするべきかどうかではなく。
先ずは、患者さんを受け入れて知ること。
こちらがなにかをしなければいけないという思考や意図は一旦、置いとくこと。
患者さんのことを知れば何をするべきかを導いてくれる。
そう考えると、僕自身の心は軽くなって毎日ひやひやしながら患者さんと向き合うことは減りました。
こうでなければいけないとか、できないといけないといった具合の既成概念などは自分の感覚を鈍らせたり手を固めてしまうので施術の効果もイマイチな気がしますしね。
患者さんと向き合うときの初心を思い起こさせてくれるような一冊です。
また読み返してみて、紹介できればなと思います。
余談ですが、マクギャレイ先生は研修医の時に妊娠してフラフラになりながらもハードなスケジュールで患者さんのために尽力されていたようです。
この時代のアメリカでは男尊女卑の文化が根深く、女性は医師になるべきではないという考えが浸透していたためイジメもひどかったようです。
考えただけでゾッとしますが、そんな困難にぶつかっても信念をもって立ち向かっていく
マクギャレイ先生の意志を受け継ぎたいものです。
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